その人にピアスホールを開けてもらうのを待っている、わけない

言葉、経験、形態に整頓できない「その人」について、曖昧にしない方がいいと思った

鬱陶しいの一言につきる

 

たしか二年の終わりから休み時間になると話してくるようになった。一回席が隣になったこともその人がこちらによく絡むようになった原因だと思う。

そんなひどいこと言うなよって感じだが、反発でも誇大でもなく、わりと本当に鬱陶しかった。その人の好きな本、絵画、映画、場所、ゲーム。その人の話を聞いてばかりいた。話したいと思わなかったから、聞いていた。

無礼を承知で言わせてもらうと、その人は距離感が上手くはかれない人だ。精神に問題があるわけではない。ただ、今までの人生で作ってきた友達が少なかったからだと思う。流石に本人には聞けないが、そうだと思っている。後に本人の口から、地元の小学校でいじめられていたと聞いた。地元の中学では優等生ムーブをしていたらしい。その人の過去についてはまた別の機会に詳しく書く。とりあえず友達少なそうイメージは的外れではなかった。

聞く気が無いなりにその人が何を好きかがわかっていった。古代史、神話(特にギリシャ神話)、高慢と偏見シャーロック・ホームズなどなど。内容自体は興味深かった。ただその人のテンションが、性格からくる話し方が、リアクションが、とても苦手だった。

でも知らないことをたくさん話してくるのは楽しかったし、時々こちらから楽しそうに相槌を打つこともあった。そのあとは決まって、(あ~、話が続いてしまう。やっちまった)と頭を抱えた。

そのうちまわりの友達から「仲良しじゃん」と言われたり、その人のことはあいつに聞けばわかる、というような雰囲気になっていた。そんな仲いいつもりなかったんだけど、その人と話してるときめんどくさそうにしてるの見えない?と聞くと「でも仲いい相手に対しても大体あんなクールさじゃない?」と返ってきた。身から出た錆という言葉を思い出した。こっちの中では全然違う態度のつもりだった。

 

鬱陶しくても手酷く断る労力と気合いを惜しんだ。それからもしかしたら、可哀想だから断れなかった、なんてのもあるかもしれない。むこうのペースに流されてる、強引だ、今さらながらそう思う。

その人の鬱陶しさに麻痺して受け入れていくまで、半年はかかった。長い馴れ初めだった。

振り返ってみても、第一印象、馴れ初め、それぞれ全然よくない。その人はそういうところがある。好きじゃないに好きをぶちこませてしまう勢い、好きじゃないに好きを与え続ける持久力(無視力?)。あとはこっちに好きが生まれるまで待つだけ。一方的。でも今はもうこっちにも好きが生まれている。流石だよ。幼稚園児並みのアプローチでとてもしゃれてるとも普通とも言えないけど。